被相続人(亡くなった方)が生前、遺言で相続財産の分配を決めていた場合は遺言のとおりに財産を分けます。ただし、遺言の通りでは残された家族の生活を脅かす可能性があるので、遺留分(いりゅうぶん)で一定の割合で相続人の権利を保護しています。
遺留分というのは法律で相続人が相続できる最低限の割合のことで、
- 配偶者・子のどちらか一方でもいる場合は相続財産の2分の1
- 父母だけの場合は相続財産の3分の1で、兄弟には遺留分はありません。
遺留分は、それを侵害する遺言が無効になるわけではありませんし、遺留分を侵害された相続人が自動的に遺留分の割合を取得できるわけでもありません。遺留分を侵害された配偶者などが遺言により財産を受け取った相手に対して、自分の遺留分が侵害されたことを知った時から1年、または相続開始から10年以内に遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)をしなければ、遺留分の請求権が消滅して遺言に書かれたとおりに財産が分配されてしまいます。
遺言があった場合でも、そこに遺産分割の禁止が入っていない場合(民法では被相続人は遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができます)は遺産分割ができます。遺言があるのに相続人が遺言のとおりに相続したくない、あるいは相続できない場合もあるからです。例えば、遺言で不動産をもらった人が現金の方が良いと思っている、不動産は全部自分の所有にして現金(代償金)を払うようにしたい、遺言の通りに相続をすると税法上不利になる、などです。こういう場合の遺産分割も相続人全員の同意が必要です。また遺言があっても遺言から漏れている財産があった、遺言に割合の記載はあったけど財産がはっきりしない、遺留分減殺請求をされたなどの場合は遺産分割協議が必要です。遺言書には公正証書による遺言の他にも、自筆証書遺言などがありますが、少子高齢化の影響や相続税法が改正になったことで、作成が増加傾向にあります。