不動産の取引をしていると、実測の面積と登記簿に書いてあるいわゆる公簿面積が違うことはよくあります。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?
日本で登記制度がスタートしたのは明治時代。
測量をして面積を測ったのは、明治政府が土地に対して課税をするのが目的で、明治10年代から20年代初めのころに、短期間で測量して作られた土地台帳に土地面積が書き込まれて、それを元にして現在の登記簿に移行されてきました。
現在より劣っていた明治時代の測量技術で測量された面積が、そのまま現在の登記簿に反映しているからこのようなことが起ったとも考えられています。
近代的な測量技術が発達する前は、計測の道具に縄を使っていたので、測量の技術もさることながら、天候による乾湿・縄の老朽度などによって、測量の時に相当な誤差が生じたということです。
そのようなことから、縄延び(なわのび)、縄縮み(なわちぢみ)という言葉が生まれました。
つまり縄延びは、土地の実測面積が公簿(登記簿)面積より大きいことで、縄縮みは、土地の実測面積が公簿面積より小さいことをいいます。
登記制度は明治時代から始まったのですが、土地の測量は太閤検地があったくらいですから、もっと以前からありました。
明治時代に測量した時のやり方は主に人民が行い、少数の役人が検査するやり方だったので、その時過少申告して税金を安くしようと、測量に使う縄を故意に長めにしたとか。
明治政府が認定した公的測量器具の縄だって、何度も何度も測っているうちに引っ張られて延びるので2メートルの縄が例えば2m10センチくらいになってしまい、延び切った測量器具で測った面積なので当然実測よりも小さい数値が出る、ということですが、明治時代だって引っ張っても簡単に伸びない竹や木、鉄棒などがあったはずですし、何故あえて縄で測る必要があったのでしょうか?
もしかすると縄などを使って測量はしていなかったのではないか、と思ってしまいます。だって江戸時代よりはるか昔に寺社などで高度な木造建築物が建てられているのに、そんな稚拙な測量技術のはずはないと思うのです。
それに田畑などでは、数%から10%程度の縄伸びがある所があったり、山林については100%を超える事例もあるらしいです。
もし農民が重い税金を少しでも軽くしようとして、測量の面積をごまかしたことが原因でだとすると、一方の税金を徴収する方からすれば、逆に縄を短くして税収を上げることだってできるのですから、そんなに簡単に農民が面積をごまかすことはできないのではないでしょうか。徴収する方が本気でやれば、短い縄を公共測量器具にして「これで測れ!」ということになれば、縄伸びではなく縄縮みが普通になるはずです。
だから縄が伸びていい加減な測量結果になったということはないと思います。
縄延び、縄縮みについては結局正解が分かったわけではないのですが、測量が稚拙だったり、ごまかしたのではなく面積調整があったのではないか、という考え方もできます。
面積調整というのは、生産量に応じて面積を確定したということです。例えば日陰になる部分は、生産量が低いからその分の面積を小さくするとか、不作などのことを考えて面積を小さくしたとか。もしそうだったら縄のびの理由は、調整をするための知恵だったのかもしれません。
縄延び・縄縮み
公開日:
カテゴリー: 不動産売却