トウリハウジング通信 2023年9月号

公開日:

更新日:2024/05/20

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給水管と漏水事故

水栓のハンドルやレバーを操作すれば、蛇口から水が出てくる。毎日、当たり前のように使っている水は、浄水場から「送水管」を通って給水所へ。そこで水を貯めて、配水量の調整をしながら「配水管」を通って、各家庭の前の道路まで送られます。そして道路から「給水管」を通って各家庭に届きます。水道管も通る場所によって呼び方も変わるのですね。

今回はこの内の給水管の材質に関する話題です。

普段の生活で、給水管がどんな材質を使っているのか、意識することはないと思います。それは給水管の材質が何であっても、いつでも安全できれいな水が使用できて、トラブルなどで止まることはほとんどないからでしょう。

水道が普及し始めた頃に使用されていたのは、鉛管でした。よく使用されていたのですが、現在利用されている水道管に比べると水漏れしやすい上に、鉛が水中に溶け出して、その水を飲んだ人の健康に悪影響があることから、現在では新たに使われることはありません。鉛管からの取替工事も進められているのですが、まだ一部、給水管に使われている場合があります。

そして鉛管に代わって使用されたのが、鉄管です。鉄でできているので丈夫で耐震性があります。しかしサビやすく、加工しにくいことから、管の中に錆でできたこぶが給水管を狭くして水の出が悪くなったり、赤水が出てきたり、また管が錆びて穴が空いたり、鉄管と鉄管を繋ぎ合わせる部材(継手:つぎて)のあたりが錆びて脆くなった部分から水が漏れたりすることがあります。 築年数が古い建物では、今でも鉄管を使っているケースは多く、弊社が所有して賃貸している区分所有建物(マンションの一室)でも、鉄管を使っていると思われる部屋があります。


実際に、そのうちの2部屋で、この1~2年の間に漏水事故がありました。漏水があった部屋は、どちらもオーナーチェンジ(賃貸中の部屋を賃貸中のまま)で購入した部屋です。ですから購入する時も、購入してからも賃借人が住んでいるため室内を見ていません。多くの区分所有建物では給水管は部屋の床下や壁の中を通っているため、漏水している部屋に住んでいる方が階下に水漏れしていることに気が付くことはほとんどなく、階下の方からの連絡で知ることになります。この部屋も、管理会社から「下の階の天井から水が漏れている」と連絡があり、漏水を知りました。すぐに賃借人(漏れている部屋に住んでいる方)と連絡を取って、部屋の入口付近にあるバルブを閉めて、水漏れを止めました。そして、床を切り込んで漏れている箇所を確認して修繕するのですが、上記の水漏れをした2部屋についていえば、部屋の入口で水を止めてしまうので、キッチン、浴室、洗面、洗濯、トイレが使えなくなるので、生活できません。そこで漏水を止めて修繕工事をする間、賃借人にはホテルやウィークリーマンションに一時的に移っていただきました。また床を切り込んで給水管を交換するので、家財を移動させなければなりません。家財がたくさんあって、移動するスペースがない時には、家財の一部も倉庫を借りて、一時的に移動してもらいます。修繕工事が始まると、漏れた箇所が分かったとしても、それ以外の箇所でも鉄管を使っているので、また漏れる危険があります。室内の給水管、同時に給湯管もすべて交換しました。更にキッチンや浴室なども古いものを使っているので交換。結局水回りはほぼ入れ替えてしまいました。

漏れた部屋の修繕工事とともに、階下の部屋の修繕も行います。業者さんと一緒に伺って、被害の状況を見せていただき、修繕の見積もりを取ります。分譲マンションの場合は管理組合が賠償責任保険に入っている場合もあって(管理組合か管理会社に確認すれば分かります)、階下への賠償は保険金で全部、または一部支払われる場合がありますが、劣化となると保険金支払いの対象外になることもあります。もし保険金支払いの対象外になると、階下の修繕費用も全額自己負担となります。

話は給水管の材質に戻りますが、水漏れした部屋で新たに入れ替えた給水管は、ポリエチレン管でした。鉄管はまっすぐなので、曲げる時には継ぎ手を使います。先ほどの繰り返しになりますが、この継ぎ手のあたりが錆びて、漏水の原因になります。ポリエチレン管は柔らかい素材で出来ているので、簡単に曲げることができます。そして錆びにくく、加工がしやすいのが特長です。これから給水管を入れ替える時には、このポリエチレン管が主流になると思います。

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編集後記

今回の漏水した部屋に関連して、初めにも書きましたが、漏水している部屋では、給水管などは床下を通っていたので、賃借人は、漏水していることは知りませんでした。そこへ弊社がいきなり連絡をして「水を使わないで」とか「一時的に他へ引越して」など、賃借人からすれば「滞りなく家賃を支払っているのに、突然出て行けというのか」と言いたいところだったと思います。実際に1組は近くのホテルを探して予約を取っていただき、もう1組はマンスリーマンションを手配して引っ越していただきました。また漏水があってからは、たびたび電話をしたり、今後の打ち合わせやリフォーム業者さんに診てもらうために、部屋にお伺いしたりして、大変なご迷惑をおかけしたのですが、2組とも快く協力して下さったので、おかげさまで修繕工事をスムーズに終えることができました。ご協力に感謝しています。