トウリハウジング通信 11月号

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更新日:2022/11/24

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相続土地国庫帰属制度

前々回で相続登記義務化の話題を書きましたが、相続した土地が「今住んでいる場所から遠く、利用する予定がない」「周りの土地所有者に迷惑がかかるので維持していかなければならないと思うが、負担が大きい」などの理由で相続したくない、できれば手放したい、そういう土地もあると思います。

しかし相続したくない土地であっても、現在の法律では、土地の所有権の放棄は認められていません。そのうえ相続登記の義務化も始まります。では、国などへ寄付ができるかというと、財務省のホームページには「行政目的で使用する予定のない土地等の寄付については、維持・管理コスト(国民負担)が増大する可能性等が考えられるため、これを受け入れておりません」と記載されています。

確かに使い道の乏しい不動産が国庫に入ると、管理をする手間や費用がかかります。そしてその費用というのは、私たちが支払っている税金から捻出することになります。しかし、このような相続したくない土地を相続したとしても、結局管理されないまま、いずれは所有者不明土地になってしまうことだって十分考えられます。

そこで2023年4月27日から、所有者不明土地の発生を防ぐために「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が施行され、相続や遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部または全部を譲ること)で取得した相続人が一定の要件を満たした場合に、土地の所有権を国庫に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」が始まります。

申請する場所は、その土地を管轄する法務局を予定していて、この制度が開始する前に相続等によって取得した土地についても対象になります。つまり何十年前であっても相続や遺贈で取得した土地なら対象になりますが、この制度は相続や遺贈で取得した方が対象で、売買で取得した所有者などは対象になりません。

この制度を利用する場合は審査手数料を支払って申請します。共有で所有している場合は、共有者全員で申請しなければなりません。先ほど売買で取得した所有者はこの制度の対象にならないと書きましたが、共有者の中に相続や遺贈で取得した相続人がいる場合には、売買で取得した共有者がいても申請することができます。申請を受けた法務省は、必要に応じて実地調査をして承認するかどうかを判断します。宅地や農地など土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費相当の負担金を納付することによって、国庫に帰属されます。つまり管理費を支払って引き取ってもらうということです。負担金は例えば100㎡の宅地の場合、548,000円になります。

相続等によって取得したままになっている土地を持って困っている人は多いと思うので、国庫に帰属させるという制度は画期的だと思いますが、どんな不動産でも引き受けてくれるというわけではなく、申請することができない土地など制限があります。

まず申請をすることができない土地は

  1. 建物がある土地
  2. 抵当権などの権利が設定されている土地
  3. 他人の利用が予定されている土地
  4. 土壌汚染されている土地
  5. 境界が分からない土地、所有権の範囲などについて争いがある土地

そして、承認を受けることができない土地は

  1. 一定の勾配や高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  2. 土地の管理・処分を阻害する物が地上にある土地
  3. 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない物が地下にある土地
  4. 隣接する土地の所有者等との争いをしなければ管理・処分ができない土地
  5. その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

このような土地は、相続人にとっても使い道が乏しいので、相続したくない土地なのだと思うのですが、果たしてこの条件をクリアして国庫に帰属する土地はどれくらいあるのでしょうか。所有者不明土地の問題を解決するのは、簡単には行かないと思います。

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【すみれを摘んでくるまで家には入れないよ】

マルーシカが森の中に入ると小さい明りが見えました。それは大きな焚火で、その周りを12人の男たちが囲っていました・・・

編集後記

最初に書いた「相続土地国庫帰属制度」は来年4月から始まりますが、不要な土地を引き取る会社(不動産会社)というのがすでにありました。国庫に帰属させることができるのは、相続や遺贈によって取得した土地が対象になりますが、その会社は日本中のどんな土地でも引き取るそうです。弊社がその会社を知ったのは、相続した北区にあるマンションを売却したいと、少し前にご依頼をいただいたことがきっかけです。売却のご依頼をいただいたマンションへ伺うとお客様から「この袋の中にマンションの資料が全部入っていると思います」と見せていただいた資料の中に、北海道の土地の資料が入っていたのです。亡くなった方が買っていたようで、後日調べてみると公図も存在しない原野でした。そのことをお客様にお伝えすると「何とか手放す方法はないか」ということになって、どこか引き取ってくれるところを探していたら、前述の不要な不動産を引き取る会社を紹介して下さった方がいて、その会社に謄本などを送り、引き取りの査定をしてもらいました。数日後、北海道の原野約400㎡の土地を約160万円を支払ってもらえれば引き取ると、連絡がありました。お客様にお伝えすると「そんなに支払えない」ということで、取引には至らなかったのですが、こういう仕事もあるのですね。

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