トウリハウジング通信 2025年2月号

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カテゴリー: トウリハウジング通信

不動産相談

弊社では、不動産に関することなら、いつでも、どんなことでも相談を承っています。対面だけでなく、電話やメールでも承っているのですが、電話やメールですと、詳しい状況まで分からないことが多く、回答が一般的なものになってしまいます。それでも、不動産の取引というのは、こういうものか、と何となく理解していただいているのではないか、と思っています。

ご相談の内容としては、土地や建物の賃貸借に関すること、つまり借地権や借家契約に関することが多いです。今回は、その中から2件の相談をご紹介します。

【相談1】
10年以上前に父が所有している土地を、知り合いに貸しました。建築業界の方で、仕事で使う材料などを置くために使用していましたので、建物は建っていません。知り合いなので、賃料だけ決めて、契約書も作っていません。時々、家賃の支払いを忘れる時があるのですが、催促をすると支払ってくれます。貸している期間が長くなり、父も年取ったので、いつまでもこのままの状態にしているのが不安です。明け渡してほしいと思っているのですが、口頭で契約したので、口頭で「明け渡して」と言えば、明け渡してくれるのでしょうか?

知り合いに土地や建物を貸すときに「使って良いよ」と軽い気持ちで貸してしまうのかもしれませんが、口頭で賃貸したものであっても、契約は成立します。貸している土地には、建物はないということなので、借地借家法は適用されない可能性が高いです。

借地人を保護する借地借家法は建物所有を目的としたものなので、今回のような資材置き場、または駐車場のような使用方法では適用されないという考えが一般的です。借地借家法が適用されない賃貸借なので、今回は民法が適用されます。この契約では契約期間の取り決めをしていないようですが、その場合の契約期間には定めがあります。最低期間(借地借家法は最初の契約期間は最低30年)はありませんが、最高は50年(令和2年3月以前に開始した契約は最高20年)です。

相談者は賃借人に土地を明け渡してほしいと考えています。借地借家法が適用される場合、賃貸人から解約の申し出をする場合は、正当な事由がなければなりませんが、今回のように借地借家法が適用されない賃貸借の場合は、賃貸人は正当な事由は必要ありません。いつでも解約の申し出をすることができます。ただし、今回のように解約の申し入れをしてから契約終了までの期間に取り決めがない場合は、解約の申し入れをしてから、契約終了までの期間(解約予告期間)は1年になります。少し長いですね。特約があれば解約予告期間は、短縮することができますが、貸すときに契約期間・支払期限・解約予告期間などを取り決めていないようなので、解約予告期間は1年になります。知り合いであっても、賃貸借をする際には、契約内容に関する認識の違いとか誤解などから争いが生じやすいので、契約書の作成はしておくべきだと思います。

【相談2】
借地権付戸建に住んでいます。借地契約の満期が来たのですが、そのまま期限が過ぎてしまいました。このままにしておくと、地主さんから契約解除されしまうのでしょうか?

借地権の契約期間が満了しても、法定更新と言って、借地権者(賃借人)が土地の使用を継続して借地の上に建物が建っている場合には、借地契約は更新扱いになります。法律上、借地契約が更新された状態となりますので、契約解除されることはありません。法定更新されると、それまでの契約と同一条件で更新したものとみなされますので、契約期間もそれまでの契約と同じになります。

ちなみに、平成4年7月31日以前に設定された借地権については、旧法である借地法(旧借地法)が適用されますが、この旧借地法が適用される借地契約でも、法定更新の規定があります。もし借地上に建物が建っていなかった場合には、賃借人から更新請求をすることはできません。更新請求することができないにも関わらず、賃借人が借地の使用を継続している場合には、旧借地法と借地借家法では規定が異なります。旧借地法では、法定更新の規定は適用されますが、賃貸人は正当な事由がなくても異議を述べることができ、契約は終了となります。借地借家法の場合、建物が残っていなければ法定更新の規定が適用されず、借地契約は自動的に終了してしまいます。

お子様へ贈る 今月のおすすめ絵本(読物)

やさいのおにたいじ
-御伽草子【酒呑童子】より-

作:つるた ようこ
出版社:福音館書店

京の町では娘たちがこんにゃくいもの鬼にさらわれていました。ある日、カブの姫がさらわれてしまい、カブの姫の父親は姫や娘たちを助ける為に都から6人の知恵と勇気ある野菜を集めました。集まったのは、かもなす、堀川ごぼう、金時にんじん、まつたけ、たけのこ、みずな。6人は山を越え、川を渡り、こんにゃくいもの鬼がいる屋敷へ向かいました。

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編集後記

さきほどの借地権の法定更新については、土地賃借人(借地人)から【更新料は支払わなければなりませんか?】という質問を受けることがあります。確かに借地借家法に更新料の支払い義務に関することは書いていません。つまり支払わなければならないとも、支払う必要はないとも、書いていません。法律上は書いていませんが、賃貸人の立場で考えると、当然受け取れると思っていた更新料を借地借家法に書いていないから支払いません、と言われたらどうでしょう。賃貸人と賃借人の関係が悪くなるだけではなく、例えば、賃貸人の承諾が必要になる場面、つまり借地権売却や建て替えの場面が来た時に承諾しない、他にも、借地権購入や建て替えの時に住宅ローンを利用する際、金融機関に抵当権設定承諾書を提出するのですが、この書類には賃貸人の印鑑証明書を付けて、実印を押さなければなりません。賃貸人がこの書類に実印を押さなかったら、融資を受けることはできません。更新料は賃貸人、賃借人の円満な関係を維持するためのもの、と考えて、支払うことを検討してはいかがですか、とお伝えするようにしています。