トウリハウジング通信 2025年1月号

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強行法規と任意法規(借地借家法)

今回は、法律の2つの概念、その例として不動産に関連する法律、借地借家法について書きます。

借地借家法の目的は、主に借地人や借家人の権利を守ることです。つまり、土地や建物の賃貸借の関係において、賃貸人に対して弱い立場にある借地人や借家人が、不当な扱いを受けないようにするために借地借家法が設けられています。

ところで、日本の法律には、強行法規と任意法規という2つの基本的な概念があります。強行法規は、社会の秩序を維持して、公正を保つために重要な役割を果たしており、たとえ当事者間で合意したとしても排除することができない法律の規定です。これに対して、任意法規は当事者間の合意によって適用しないことができる、変更可能な法律の規定です。

強行法規は、個人や社会全体の利益を守ることを目的にしています。繰り返しになりますが、借地借家法は、土地や建物の賃貸借に関する基本的な法律であり、この法律の目的は、借地人や借家人の権利を保護し、安定した住環境を提供することです。ですから借地借家法の多くは強行法規として機能していて、当事者間の合意によって変更することはできず、仮にこれを無視する契約をした場合、その契約は無効になります。借地借家法の中でも特に重要な強行法規には以下のようなものがあります。

●契約期間の規定●

借地借家法では、借地契約の最低期間を30年と定めています。これにより、借地人は長期間にわたって、安定して土地を利用する権利が保障されています。強行法規なので、契約期間を短縮する合意をした場合、その契約は無効になります。

●更新拒絶の制限●

借地借家法は、貸主が契約更新を拒絶する場合の条件を厳しく制限しています。正当な理由がないのに更新を拒絶することはできず、これによって借地人や借家人の権利を保護しています。

●賃料の改定●

賃貸借契約における賃料改定の規定により、賃貸人と借地人または借家人の間で賃料の公平性が保たれます。一方的な賃料引き上げが防止され、適正な賃料水準が維持されます。

以上が借地借家法の主な強行法規の内容ですが、その他、不動産に関連する強行法規としては、建物の安全性を確保するための建築基準法などがあります。一方、任意法規には、民法の多くの規定が該当して、当事者の合意によって変更することができます。民法には「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う」という条文があるように、任意法規とされる規定において、異なる意思表示をしたときには、そちらが優先されます。

しかし、民法は、すべてが任意法規ではなく、強行法規もあって、当事者の合意によって変更することができないものもあります。

例えば「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とする」という、いわゆる公序良俗に反する行為は無効になるという条文です。公序良俗というのは、例えば暴利行為(高利貸し)、人権を侵害する行為(男女を差別する雇用契約)、賭博などです。また、未成年者が親の同意なしに行った契約は取り消すことができるという規定も強行法規です。このように、民法の多くは任意法規ですが、中には強行法規が含まれています。強行法規によって、当事者間の権利と義務が明確に定められ、不当なトラブルを未然に防ぐことができます。

強行法規の条文の特徴として「無効とする」とか「〜してはならない」という文言が使われています。これらの文言が条文にある場合、強行規定の可能性が高いです。また任意法規の条文の特徴は「〜できる」とか「別段の意思表示がないときは」という文言が使われています。

強行法規は、個人の自由な意思表示を尊重しながらも、社会全体の利益を守るために重要な役割を果たしています。特に、借地借家法のような法律は、日常生活に密接に関わるため、その重要性は非常に高いです。近年、民法の改正が進んでいますが、これによって強行法規の重要性が変わることはありません。むしろ、新しい社会問題に対応するために、強行法規の適用範囲が広がることも考えられます。

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編集後記

初めの【借地借家法の中でも特に重要な強行法規】の中で、借地契約の最低期間を30年と定めています。 と書きましたが、これをご覧になって「あれっ、借地契約の期間は20年じゃないの」と思った方もいらっしゃるかもしれません。実は借地借家法(以下「新法」と言います)は平成4(1992)年8月1日に施行された法律で、新法が施行されたために、それまで適用されていた「借地法」、「借家法」(以下「旧法」と言います)は廃止されました。廃止された借地法では、借地の期間として、コンクリート造等の堅固建物は最低30年、木造等の非堅固建物は最低20年という期間が定められ、さらに更新後の期間についても同じ期間が定められていました。これに対して、新法における借地期間は、建物の構造にかかわらず、一律、最低30年とされていて、更新後の期間については、最初の更新が20年、2回目の更新からは10年とされ、更新後の借地期間が短縮されます(契約書にそれ以上の期間の定めがある場合はそちらが優先です)。平成4年7月31日以前に締結された借地契約は、旧法である借地法がそのまま適用されるということで、新法施行から30年以上経った現在でも、新法と廃止された旧法が混在していて、難しい借地がさらに複雑になっています。