空き家対策 -宅地建物取引業法の改正-
今、全国的に空き家が増えて、深刻化していることはニュースなどでも報道されてご存じのことと思います。総務省が5年ごとに行っている「令和5年住宅・土地統計調査」の結果によりますと、日本の住宅総数は6502万戸で過去最多でした。その中で常に居住していない「空き家」(売却や賃貸で募集中の空き家なども含みます)の数は、全国で900万戸に達し、空き家率は約13.8%まで上昇しています。およそ7軒に1軒が空き家ということになります。さらに、放置されている可能性の高い「賃貸・売却用の空き家、セカンドハウスなどの二次的住宅を除く空き家」は、385万戸(全体の約5.9%)もあります。前回の5年前の調査では約349万戸だったので、5年間で約36万戸も増えていることになり、今後も増え続ける空き家対策は喫緊の課題です。
空き家が放置されると建物は急速に老朽化し、倒壊する危険性が高まってきます。庭木や草も伸び放題になって、周囲の景観を乱したり、害獣や害虫による衛生面の問題が生じる心配もあります。また、犯罪の温床になる不法侵入者が住みつくなどトラブルを引き起こす危険もあります。このような問題に対して、政府は様々な対策を講じているのですが、効果的な対策に至っていません。そこで、その一環として宅地建物取引業法を改正することになり、2024年7月から施行されました。
1.空き家等に係る媒介報酬(仲介手数料)規制の見直し
不動産売買における仲介手数料は、1970年に国土交通省が定めた「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」によって、不動産仲介業者が受け取ることができる上限が定められています。しかし、これは売買価格に対する一定の料率(400万円を超える場合、物件価格×3.3%+6.6万円)のため、高価格帯の物件には適用しやすいのですが、地方にあって築年数が古い、空き家の状態が長期間に及び放置されている物件などは価格が低額になってしまうことが多いので、仲介手数料もそれに比例してしまいます。そのため、例えば、東京にお住まいの方が、相続で取得した地方にある実家を売却するために、自宅近くの不動産会社に売却の依頼をすると、その不動産会社が実家を調査するための交通費や調査費、そして調査の時間も通常より多くかかるため、不動産会社としては、売却できたとしても赤字になるとして、売却の依頼を断るかもしれません。
そこで、今回の改正では800万円以下の不動産に対する仲介手数料を最大30万円に制限が緩和されることになりました。低額物件を売買したときの仲介手数料を引き上げることによって、低額の不動産を売却しやすいようにするわけです。
例えば、売買代金500万円の仲介手数料の上限は、今までは500万円×3%+6万円に消費税を加えた231,000円でしたが、改正により330,000円になります。この法改正により、売買価格800万円以下の物件は、50万円でも、100万円でも、上限330,000円の仲介手数料を受け取ることができるようになりました。ただし、これは仲介手数料の制限の緩和なので、不動産会社は売却に関する媒介契約を締結する時には、売主に報酬額について説明をして合意をする必要があります。
2.不動産コンサルティング業務は媒介業務とは別に報酬を受け取ることができるようになりました。
今回の報酬規定の見直しでは、もう一つ大きな見直しがあります。それは、国が定めている宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方のガイドラインにおいて、不動産コンサルティング業務における報酬については仲介手数料とは別に受領できる、とするルールが明確に記載されました。これにより、不動産コンサルティング業務や空き家・空き地管理業務などは、仲介手数料とは別に請求することができるようになりました。不動産業界にとって新しいビジネスになりますし、また不動産業以外の業界からの参入も考えられます。
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