トウリハウジング通信 2024年5月号

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日本の水道

2024年4月、水道の整備や管理が厚生労働省(以下「厚労省」)から国土交通省(以下「国交省」)などに移管されました。これまで、下水道は国交省、水道は厚労省が担ってきたのですが、厚労省が水道の管理をしてきたのは、川の水や井戸水を安全に飲めるようにするには、病原性微生物の殺菌が欠かせないからです。水道水には消毒の役割を担う塩素が含まれています。塩素などの消毒剤に対しては、微生物の種類によって消毒効果が出やすいものと出にくいものがありますが、塩素消毒は一般の細菌、大腸菌、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどに効果があるそうです。

日本の近代水道は、1887(明治20)年に通水した横浜市から始まりました。統計によると、明治後期から大正10年頃までは、乳幼児死亡率が上昇していましたが、大正10年の乳幼児の死亡は30万人を超えていたようです。この対策として東京都では、1922(大正11)年に塩素注入設備を設けて、塩素消毒を始めました。これを境にして乳幼児の死亡率、平均余命ともに改善に向かいました。水道の普及率が50%を超えたあたりから、乳幼児の死亡率やコレラ、赤痢、腸チフスなど、水を介して伝染する病気の患者数は急激に減少しました。水道の普及率は令和3(2021)年度には、全国で98.2%に達して、公衆衛生という点で見れば厚労省の目的は達成したと言っても良いと思います。

しかし、その一方で、水道の老朽化が全国各地で進んで大きな問題になっています。現在の水道に関する最大の課題は水道管の老朽化対策になってしまいました。全国の水道管の長さは地球18.5周分の約74万キロメートルにもなります。厚労省によりますと、令和2 (2020)年度に法定耐用年数を超えた水道管の割合は20.6%と全体の約5分の1になっていますが、補強など、対策がとれた水道管は全体の0.65%しかありません。水道管の法定耐用年数は40年。水道は高度経済成長期の1960~70年代に急速に普及し、多くが更新時期を迎えています。水道管は法定耐用年数を超えて使い続けると金属に錆ができて破損します。老朽化すると水道管に穴が開いて、そこから水が噴出すれば水道管は破裂してしまいます。破裂した場合、噴出する水を止めるため、水道管を遮断しなければならなくなります。このような水道管の漏水・破損事故は全国で年間約2万件もあるのです。

水道は原則として、水道料金で建設費を賄うことになっています。また水道事業の業務は、主に市町村などが独立採算制で事業者が運営してきたので、事業者数は全国に約1,400もあり、電気やガスなどに比べると規模が小さく、職員数も少ないです。その上、人口が減少していることや節水の影響によって使用量が減っているため、1つの自治体で1つの水道事業という独立採算制では立ち行かなくなってきています。複数の自治体をまたぐ広域で連携を進めて維持管理していくなど、水道基盤の強化は喫緊の課題で、すでに県内の水道事業を統合して、1県1水道体制を導入している自治体もあります。また水道料金の収入低迷で何年も赤字が続いて、老朽化した水道管の更新や耐震化のために水道料金の値上げに踏み切った自治体もあります。

そこで、今まで下水道の整備・管理をしてきたことに加えて、道路の老朽化対策、災害対策を担ってきた国交省に水道の管理を一元化(水道業務のうち水質や衛生に係る業務は、国交省ではなく環境省に引き継がれます)することによって、老朽化対策、災害対策を一体で進めていくことになりました。国交省には道路や河川の整備・管理を担う地方整備局を含めた地方組織のネットワークがあります。この移管により、水道システム全体の効率化や緊急時の迅速な対応が期待されています。また、水道管の老朽化対策や災害時の復旧作業において、国交省のノウハウやリソースが活用されることで、より効果的な施策が実現される可能性があります。

水道管の老朽化は全国的な課題であり、地域ごとに異なる状況が存在します。水道は人々の生活に欠かせない基盤であり、安全な水の供給は社会全体の健康と福祉に直結します。前述しました通り、一部の自治体では組織の統合や水道料金の値上げ、水道管の更新工事が進められていますが、課題解決にはさらなる取り組みが必要です。地域間の連携や技術革新を通じて、水道システムの安全で安定した運営と管理が確保されることを期待しています。

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お父さんは嘔吐してしまった子供を診察してもらうために連絡をしました。
遠くのほうからバイクのエンジン音が聞こえてきます。玄関に出ると、バイクに乗った大きな白黒の猫が白衣を着てやってきました。

編集後記

調査した年によって多少国が入れ替わりますが、2024年に国交省が発表した、水道の水をそのまま飲める国は日本・アイスランド・アイルランド・ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・ニュージーランドなど、わずか11か国。そして、そのまま飲めるが注意が必要な国は29か国と世界の中ではわずかしかありません。日本の水道は、水質が良く、水道水がそのまま飲める数少ない国の一つなのです。

現在、東京都水道局では、水道水の安全性を維持しながら、おいしい水を供給するために131ヶ所の給水栓自動水質計器を設置して、残留塩素を継続的に監視しています。残留塩素の濃度が高い場合には浄水場での塩素注入量を下げるなど、残留塩素濃度の結果を浄水場や給水所での塩素注入量に反映することで、残留塩素濃度を適切に保っています。蛇口をひねれば、安全でおいしい水を口にできる、高い品質の水を守るために、これからも時代に合った持続可能な仕組みを維持して行ってほしいです。