トウリハウジング通信 2024年6月号

公開日:

更新日:2024/07/14

カテゴリー: トウリハウジング通信

不動産の仮登記

今回は、不動産取引では重要な登記である「仮登記」に関する話題です。

なぜ“仮”なのか、どうして仮登記をつけるのか、もし不動産の取引で、そのような登記を見たときには要注意です。その理由についてもお伝えしてまいります。

仮登記というのは、不動産の最終的な登記(以下「本登記」)が完了していない場合や購入者がまだ所有権を取得していない場合に、将来の所有者としての権利を確保するために利用されます。本登記ができない場合や、権利の移転などが確定するまでの間、仮登記によって登記上の順位を確保することができます。

一般的な不動産売買では、契約時に、買主が売主に手付金を渡して、後日、残代金を決済するのと同時に所有権移転登記と物件の引渡しを行います。ということは契約締結から残代金の決済、物件引渡しまでの期間、買主は手付金を支払っていますが、所有権移転をしていないので、所有者は売主のままです。買主の地位がとても不安定になります。

たとえば売主Aが、買主Bと売買契約を結んだ後に、Aが別の買主Cと契約をして、CがBより先に所有権移転登記をした場合、先に契約をしたBは、不動産を取得することができません。なぜなら、この不動産は「私のもの」と主張できるのは、先に売買契約をしたBではなく、先に登記をしたCだからです。このようなことを防ぐために仮登記を利用します。売買契約をした後に、Bが所有権移転の仮登記をしておけば、残代金の決済前にCが所有権移転登記したとしても、Bは仮登記を本登記にすれば、登記の順位はBがCに優先して、所有権取得を主張することができます。

本登記をするまで仮登記は「仮」の登記であり、順位を確保する効力しか持たないので、Cにその権利を主張することはできません。このように現時点では登記の要件である権利変動が生じていないものの、将来生じる権利変動の請求権を持っている場合、それを保全するために行う仮登記を2号仮登記といいます。そして、不動産に関する所有権移転や抵当権設定などの物権変動はすでに発生しているのですが、本登記の申請手続きに必要な資料を法務局に提供できないために、本登記ができないケースで行われる仮登記を1号仮登記といいます。このように順位を確保できるというのが、仮登記の特徴の一つです。そして、仮登記のもう一つの特徴は、本登記よりも登録免許税が安いということです。

実際に、本登記が必要になる場面は、不動産に関する権利関係について争いが生じた時です。順位を確保しておけば十分、という考え方をするなら、登録免許税の節約のために仮登記にしておく、という便宜的な使い方をしているのをよく見かけます。その一つが抵当権設定仮登記です。このような登録免許税の節約を目的として行われる仮登記も1号仮登記に分類されます。 本登記を行うために必要な書類は、基本的に、通常の登記と同じです。ただし、所有権仮登記を本登記にする場合、登記上の利害関係を持つ第三者がいるときは、その承諾を得なければなりませんので、手続きが複雑になることもあります。利害関係を持つ第三者というのは、仮登記の後に所有権移転登記をした人です。しかしながら、仮登記を設定した人が本登記にしてしまうと、利害関係を持つ第三者の権利がなくなってしまいますので、仮登記を本登記にすることを承諾することはない、と思います。もし利害関係を持つ第三者が承諾しない場合、所有権移転の本登記承諾を請求する訴訟をして、確定判決を得て、承諾に代えることになります。


仮登記を本登記にすると、仮登記の後に登記された所有権移転登記や抵当権設定登記は、本登記と両立しないので、利害関係を持つ第三者の登記は職権で抹消されてしまいます。このように不動産を取得したとしても、すでにその不動産に所有権移転仮登記がついている場合は、仮登記が本登記になると対抗することができずに所有権を失います。そして仮登記は、いつまでに本登記にしなければならないという期限がないので、本登記がいつ行われるか分かりません。すでに所有権移転仮登記がついている不動産を購入するのは「とてもリスクがある」ことになります。

トウリハウジング特選物件

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編集後記

今年3月のトウリハウジング通信で、マンションの老朽化について書きました。
その中で2022(令和4)年末時点で、マンションの数は約13.6万棟、戸数にして約694万戸あって、そのうち建築されてから40年以上経過しているマンションは約126万戸になっていること。そして、築40年以上経っているマンションの戸数は、10年後には約260万戸、20年後には約445万戸になると予想されていること。マンションの老朽化が進むと、大規模修繕工事や給排水管更新工事或いは建て替えなど、さまざまな問題が出てくることを話題にしました。

弊社は、北区赤羽にあって、主に地元の北区で不動産の取引をしているのですが、先月、ご縁があって購入させていただいたマンションは、地元北区から離れている江東区南砂にある1981(昭和56)年築の物件で、まさに築40年以上経過しているマンションです。マンションの老朽化が進むと、給排水管など劣化していると分かっていながら、購入しています。