トウリハウジング通信 12月号

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ライフラインの越境

生活を維持するのに欠かすことができない電気、ガス、上下水道、通信などのいわゆるライフライン。それぞれの家で利用しているものは本来、道路にある本管や電柱から直接、各戸の敷地に引き込まれているはずです。ところが、これが直接ではなく他人の敷地を通って自宅に入っていたり、他人が利用しているライフラインが自宅の敷地を通っていたり、ということがあります。つまりライフラインが越境したり、されたりしているということになります。

このようなことが実際にどのくらいの数あるのか分かりませんが、決して少なくないと感じています。それは何事もなくスムーズに契約から残代金の決済まで終わる取引より、ライフラインの越境があって、契約の際の重要事項説明で「越境があります」と説明をしたり、越境を解消するためにその所有者のお宅へ伺ったり、越境の覚書を交わしたり、ということをするので、印象に残るからかもしれません。過去には古家が建っている土地を購入した方が、その後、建て替えるために建物を取り壊したところ・・・

  • 隣地の下水管が越境していて、そのことに気付かなかった解体業者が重機で切断してしまった
  • 水道局の図面に載っていない水道管が隣の敷地を通って入っていた
  • 隣地で利用している電線がこちらの建物の上を通っていた
  • 南側と北側の家が共同で使っている下水管が西側の家の敷地を通って道路に繋がっていた

などたくさんの事例があります。

普段、生活する上ではライフラインが越境していてもほとんど支障がありませんし、上空で電線が越境していても気が付かないことも多いのではないでしょうか。しかし地中に埋まっている配管が越境しているとメンテナンスの時に支障になることがありますし、空中で電線が越境していると、建替えの時に思い通りの建物が建てられない場合もあります。越境していることを隣地の方に話しても、隣地の方は生活をする上で支障がないこと、越境を解消するための費用を急に捻出するのが難しいことなどから、すぐに解消できない場合も多いです。

       

         

法律上、越境に関する覚書などを交わさず、何の権限もなく無断で設置されている場合は所有権が優先するので、撤去や移設を求めることができます。しかしながら相手が応じてくれない場合には、調停や訴訟に発展することもあります。調停や訴訟に係る費用や時間を考えると、必ずしも法廷で決着をつけることが良いとは思えませんが、かといって、越境されている方が故意にライフラインを切断したら刑事上、民事上の責任が生じてしまいます。越境している埋設管を設置した所有者との話し合いで移設することができれば、費用も時間も低く抑えられるので、望ましいのですが現実的には難しいことが多くあります。

話は変わりますが、水道局では私道に面している人たちが、それぞれ個人で引き込んでいる水道管を整理して、水道局の水道管(本管)を布設する事業を計画的に行っています。対象になるのはいくつかの条件があります。

  • 水道メーターが私道の中に3個以上あること
  • その私道が工事をする広さがあること
  • 私道の所有者全員の承諾をもらうこと      など

条件をクリアできれば水道局の負担で工事をしてもらえます。震災などに備えて丈夫な本管に入れ替えていくこと、漏水が多かったり、水の出が悪かったり、といったことを解消していくことが目的の事業です。

以前、敷地の中に他人の水道管が通過している土地がありました。越境されている土地は私道沿いにあって、前面の私道から奥の家で利用している水道管がその土地を通過しています。奥の家の目の前にも私道があったのですが、その私道には水道管が入っていませんでした。この地域は先ほどの水道局が行っている整備地域ではあったのですが、私道所有者全員からの承諾が取れず、本管布設の条件が整っていなかったのです。弊社がそのような時に水道局へ越境の相談に行ったのはタイミングが良かったのだと思いますが、水道局でもその地域の私道の水道管整備を優先して取り組んで下さったので、数か月後には整備工事が終わって、その周辺に水道局の本管が入りました。現実的には越境を解消することは難しいことが多いのですが、運よく越境も解消することができた一つの事例です。

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編集後記

それぞれの家で使用する水は水道管の中を有圧で通っていますので、道路に接していない土地など、特別な事情を除けば、水道管は他人の敷地を通らなくても本管から直接引き込むことができます。しかし、現在のように有圧で水を送るようになる前は、地下に埋め込んだ石や木、或いは竹で造った樋(とい)の水道を使って町に備え付けられた井戸へ送られました。そして井戸から有圧の水道管に変わっていく過程でも、最初は幹線道路に本管が布設されて、幹線道路に面していない多くの人たちは、個人の負担で本管から宅地へ引き込んだり、または個人の負担で引き込んだ人の水道管から分岐させてもらったりして、水道に切り替えていきました。現在のように家もたくさん建っていなかったことや、引き込む距離が短い方が、費用が安くなることもあって、必ずしも道路の下を通したわけではありませんでした。その後、現在までの間に空き地だったところにも家が建って、結果的に越境してしまったという事情もあるようです。

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